『知ってるワイフ』大倉忠義さんの親和性について

 

大倉忠義さん主演のドラマ『知ってるワイフ』(フジテレビ系)を視聴している。大倉くん演じる元春は正直めちゃくちゃ腹立つし、なんだこの男はと思いながら観ているのだけれど、大倉くんのハマりっぷりがすごい。本当にイライラするダメ男なのに、なぜか憎めない。

 

あらすじ

元春は、妻の澪(広瀬アリスさん)と結婚して2人の子どもにも恵まれた。しかし、昔かわいかった妻は今はいつも機嫌が悪く怒っている恐妻に。こんなはずじゃなかった!!と後悔する元春は、ある日謎の男から謎の500円玉を渡される。

 

元春はその500円玉で過去にタイムスリップ!澪と出会う人生ではなく、大学の後輩の沙也佳(瀧本美織さん)と結婚する人生を選んだ。

 

現代に戻ると、過去がそのまま反映されており、元春の妻は沙也佳になっていた。愛される俺、怒られない俺、金を持ってる家!!すべてハッピー☆と有頂天になっていたが、なんと出勤すると澪がいるではないか。

なんてことだ!!!

 

 

という内容(ざっくり)

 

プロポーズ大作戦」や「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を彷彿させるストーリーで、よくあるテーマだけど、タイムスリップものはやっぱりおもしろい。

が、夫婦間のちょっとしたすれ違いがリアルで、ときどき心が抉られる。

 

現代のパートには、ところどころ過去の元春と澪の回想シーンが入る。その回想シーンの2人が幸せそうすぎて、楽しそうすぎて、「なんでこうなった??」と思うのは元春と澪よりも視聴者なのかもしれない。回想シーンを見ているだけで切なくなって、涙がじんわりと浮かんでくる。

 

そもそも、元春は基本的に自分のことしか考えていない(ように視聴者からは見える)。

過去を変えて、妻がかわってハッピー!かと思えば、澪との間にいた子どもがいなくなっていることに気付いて1人で泣いたり「澪は俺とは会わない方がよかったんだ、だからお互い過去を変えてよかったんだ」と最強にご都合主義で思い込んだり。

 

過去の元春を見ても、あまり計画性のないプロポーズをするなど(かっこよかったけど)どこか抜けている。自分は悪くない、変わってしまった澪が悪い、とずっと思い込んでいる。

 

でも、決して悪い人ではない。基本的には良い人で、過去の元春はまぁ普通にかっこいいし、澪からすれば憧れのお兄さんになるのは否めない。

 

どこか抜けていながらもかっこいい。でもなんか自分勝手で視聴者をイライラさせる。かと思えば泣いたりするし、澪を大切に思っていたことが垣間見えたりして、憎めない。むしろ「バカ…」「違うよ…」とか「やっと気付いたか」なんて、視聴者がツッコみまくりながら観れる主人公だ。

 

その元春を、大倉くんは自分の魅力を活かして、とても見事に演じていると思った。

 

俳優とジャニーズを切り分けて考えるわけではないけれど、私は2020年に横浜流星さんのことを好きになってから、俳優とジャニーズの切り分けのことをよく考えるようになった。

俳優は演技のプロなので、もちろん演技力は高い。演技にとても真摯に向き合っている。私はその俳優の瞳や、演技に対する覚悟が好きだし、メラメラ静かに燃える闘志みたいなものにとてもときめく。

 

俳優に推しが出来てからというものの、「アイドルが俳優をやることの意味」をよく考えるようになった。そのなかで、『姉ちゃんの恋人』に出演していた髙橋海人くんの演技で答えが見つかったような気がした。

 

海人くんは、姉のことを1番に考える良き弟を演じていて、歳上の好きな人にもかわいらしさとかっこよさのギャップをうまく使って猛アタックする。あの役は、アイドルに向き合ってきた海人くんだからこそ、かわいらしさとかっこよさが融合して味が出る役だった。

 

「役として生きる」とよく言うけれど、アイドルはそもそも「アイドル役として生きている」ところがあるのかもしれない。その力を総動員して演じるのが、アイドルが俳優をする良さなのではないかと考えた。

 

アイドルだからとか俳優だからとか線引きをして何かを言いたいわけではないけれど、アイドルが俳優をやる意味というものが必ずあるということ。それを改めて海人くんの演技で知れたような気がする。

 

大倉くんの演じる元春がどこか憎めないのは、元春そもそもの性格もあるかもしれないけれど、大倉くんが必死でアイドルとして生きてきた人生が、自分で見つけた立ち位置が、少なからず反映されているからだと思う。違う人が演じていたら、きっとまるで違う元春になるのだと思うけれど、私はすごくイライラしながら観ているかもしれない。

夫婦間のすれ違いがリアルに描かれているからこそ、元春と澪の憎めなさやキュートさが大切なドラマだと思っている。ただただイライラする主人公では観ているこっちが疲れてしまう。

 

私が大倉くんをきちんと見ていたのは、10年くらい前なんだけど、そのときに感じた「おおらかさ」みたいなものを、元春の中の大倉くんにも感じることが出来る。あんなに顔が整っていて、それでいて大きく口を開けて笑う顔がかわいい。

澪の前で笑うまい、としている元春が、第3話で笑ったのとってもよかったし、なぜか泣けてしまった。

 

そして澪を演じる広瀬アリスちゃんの素晴らしいこと!!!!!あんなに瑞々しくかわいらしい笑顔出来る人いる!?毎回アリスちゃんのかわいさに救われながら見ている。

 

夫婦は、家族といっても他人だ。

他人以外の何者でもない。

だからこそ、きっと時間を作って話し合ったり、気持ちを聞いたりする場が必要だ。

元春と澪の夫婦関係の破綻は、もちろん元春だけが悪いわけでなくて、お互いのちょっとしたすれ違いからどんどん溝が生まれて、修復出来ないまでになってしまったから。

 

第3話では、元春がやっと何かに気付き始めた。

今後、元春がどのように大切なものを理解していくのか。

イライラしながら、そして心配しながら、大倉くんの演じる憎めない元春を見守っていきたいと思う。