堂本光一に完敗したこと。~『Endless SHOCK』から受けた衝撃~

「完敗だ」。

映画が始まってからものの1分でそう思った。

正直、映画としての『SHOCK』を見くびっていた。

もちろん、生は生の良さ、映像は映像の良さがあることはわかっている。しかし、これほどまでに生に近い感覚があって、そして映像としての良さもある、「良いとこ取り」のような作品であるとは夢にも思っていなかったのだ。

映画『Endless SHOCK』は、2020年2月に、無観客の帝国劇場に数々のカメラとドローンで撮影された作品。光一さんが構成・演出・主演・監督を務めている。

これを「思いつき」と言ってしまうんだから光一さんはすごい。

世界が新型コロナウイルスという未曾有の事態に直面し、エンターテイメントも少なからずストップしてしまった2020年。ミュージカル『Endless SHOCK』も公演中止を発表した。その後、光一さんはインスタグラムで舞台のシーンを配信したり、インスタライブをしてみたり、替え歌を作ったりなど、あらゆる工夫をして私たちを楽しませてくれていた。

それだけでもかなり救われたのに、今度は映画!驚いたのと同時に、「ミュージカルを映画館で観る」ということがあまりうまく想像出来なかった。

いざ映画が始まると、聞き覚えのあるオーケストラの音が耳に入ってきた。「これこれこれ!!」と気分が高揚する。光一さんが登場すると、そこからは何か夢みたいな、キラキラしたかけらみたいなものが画面いっぱいに広がって、気付くと私は泣いていた。

エンターテイメントは、たくさん摂取してきたつもりだった。

自粛期間にはMARVEL作品をすべて観て見事にハマったし、ライブの配信も家で楽しんでいた。頻繁にではないけれど、映画も行ったし、楽しみなドラマもたくさんあった。

しかし、私は枯渇していたのだ。

お馴染みの曲が聞こえて、光一さんや上田くん、梅ちゃん、美波里さん、カンパニーのみんなが歌って踊っている。みんなすごくキラキラしていた。瞳が輝いていて、そこには夢とか希望、言葉に出来ないけれどとてもワクワクする世界が広がっていた。

すると、だんだんと、足のつま先から頭のてっぺんまで、植物に水が入ってくるように体が満たされていった。よく、自分が浮かんで画面の中に吸い込まれる、みたいな描写があるドラマやアニメがあるけれど、まさしくそんな感じだ。

ふわふわと浮いているような感覚で、私はそのままSHOCKの世界へと誘われた。

生は生、映像は映像の良さがある、と書いたけれど、映画の『SHOCK』を観て、新たな発見がたくさんあった。例えば、殺陣のシーンのタツヤの1本ネジが飛んでしまったような表情や、リカのコウイチを見つめる瞳。マツがタツヤを気にしている瞳や、タツヤの苦しみ。わかっているようで、そして観ているようで見逃している素敵な表情や仕草がたくさんあること。

何かを私たちに届けてくれる人はよく「エンターテイメントは不要不急ではない」「エンターテイメントは死なない」と言ってくれる。彼らは命をかけて、エンターテイナーをしているのだと改めて感じた。

命をかけているから、その気持ちや覚悟は、私たちにダイレクトに伝わる。だって、画面の中にいる人たちは、全員瞳が輝いていた。そして、その彼らを見る私たちもまたきっと、キラキラした瞳を向けていたのだと思う。

『SHOCK』を観るようになってから、もう何年経ったかわからない。初めて観たときは、コウイチの背中を追いかけるリカに共感して、何年か経つとライバルの気持ちに共感するようにもなった。そして今、大人になってもなお、コウイチの強さは持ち合わせていない。

私は結構臆病で、何か新しいことを始める時や、ワクワクするような新しい仕事が舞い込んだ時でさえ、進むことをためらってしまう。

観終わった後に、自分にとっての「Show must go on」を考えた。今の私に足りないこと、欲しいもの、なりたい自分。私は『SHOCK』を観て、前に進む勇気をもらった。あのキラキラした世界から、カンパニーの魂のこもったパフォーマンスから。

「生至上主義」を唱えている人にも、ぜひ劇場に観に行ってほしい。きっかけはなんでもいい。誰かのファンだから、でも、なんとなくでも、なんでもいい。とにかく映画館の『SHOCK』を感じてほしい!

そしてまたいつか、生の『SHOCK』に会いに行きたい。いつになるかはわからないけれど、希望を持って待っていたいと思う。私の「Show must go on」を掲げながら。